ダイエット中に甘いものは禁止すべき? ― 科学と実例で読み解く“賢い付き合い方”

「ダイエット中だから、甘いものは我慢しなきゃ…」
でも、完全に甘いものを断つことが、かえってリバウンドやストレスを引き起こすことも。
本記事では、科学的根拠や成功者の実例をもとに、甘いものを賢く取り入れる方法を解説します。
第1章:甘いもの=悪なのか?
多くの人が「甘いものはダイエットの敵」と信じています。しかしそれは、本当に正しいのでしょうか?
「ダイエット中だから甘いものは一切禁止」――そんな極端な食事制限を経験したことのある方は少なくないでしょう。しかし、果たして甘いものは本当に“ダイエットの敵”なのでしょうか?現代の栄養学・心理学・代謝研究を基に、甘いものと体重管理の関係性について深掘りしていきます。
第2章:糖質とカロリーの関係 ― 単純な敵対構造ではない
- 糖質の摂りすぎが健康に与える影響
- 摂取タイミング・量で効果が変わる
- 砂糖入り飲料と肥満リスクの関係(Harvard大の研究)
糖質(特に精製された砂糖)は確かにエネルギー密度が高く、過剰摂取が肥満リスクを高めるというデータは数多く存在します。たとえば、ハーバード公衆衛生大学院の研究(Ludwig et al., 2018)では、砂糖を多く含む飲料が肥満、2型糖尿病、心血管疾患のリスクを高めると報告されています。
しかし、これは「糖質=即NG」という単純な結論を意味するわけではありません。摂取するタイミングや量、代謝状態によって、糖質の影響は大きく異なります。

第3章:甘いものがもたらす影響と誤解 ― 科学と心理から見える真実
ダイエット中に甘いものを食べると「罪悪感」や「リバウンドの原因になるのでは?」といった不安を抱く人は少なくありません。実際、砂糖の摂りすぎが健康に悪影響を与えることは数々の研究で明らかになっています。
たとえば、ハーバード公衆衛生大学院の報告では、糖分を多く含む清涼飲料水の摂取が、肥満・2型糖尿病・心血管疾患のリスク上昇と関連しているとされています(Harvard T.H. Chan School of Public Health, 2018)。また、米国の追跡調査でも、砂糖入り飲料を1日1杯以上飲むグループは、そうでないグループよりも体重増加のリスクが高まるという結果が出ています。
しかし、ここで注目したいのは「完全に甘いものを禁止すべきか?」という問いです。多くの人が誤解しがちですが、甘いものを排除すること自体がダイエットの成功を阻害することもあるのです。
抑制理論と“禁止”の心理的リスク
食行動心理学では「抑制理論(Restraint Theory)」という概念があります。これは、“特定の食べ物を極端に制限すればするほど、その食べ物に対する欲求が強まり、結果的に過食してしまう”というものです(Polivy & Herman, 1985)。
ストレスが高まると、体内では「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。このホルモンは食欲を刺激し、とくに甘いものや脂っこいものなど“高カロリーで快楽性の高い食べ物”への欲求を強めることが知られています(Epel et al., 2001)。つまり、甘いものを我慢し続けるほどに脳はそれを強く求めてしまい、あるとき限界が来て「ドカ食い」してしまう可能性が高まるのです。
脳内報酬系とドーパミンの関係
甘いものを食べると、脳内ではドーパミンが分泌され、一時的な幸福感や安心感が得られます。これは「報酬系」と呼ばれる神経経路によるもの。とくにダイエット中はストレスが多いため、甘いものを食べることでそのストレスを緩和しようとする生理的メカニズムが働きます。
このような報酬系の働きは、薬物やアルコール依存症と同じ仕組みであるとも言われており、甘味に依存してしまうケースも報告されています(Volkow et al., 2011)。ただし、これは“過剰な摂取”に限った話であり、適量の摂取ではむしろメンタルヘルスを保つのに役立つという見方もあります。
科学が認めた「甘いものとの共存」
最近の研究では、甘いものを完全に断つのではなく、「適度に摂る」ことでダイエットの継続がしやすくなるという結果も出ています。
例えば、断続的断食(Intermittent Fasting、IF)を取り入れた人の中には、摂取時間内に適量のスイーツを楽しみながらも体重減少に成功した例が多く見られます(Tinsley & La Bounty, 2015)。また、週1回だけ制限を緩める「チートデイ」を活用することで、継続的な制限によるストレスが軽減され、長期的に体重管理がうまくいくという報告もあります(Madzarov et al., 2021)。
実例紹介:成功した人たちのスイーツとの付き合い方
- ケース1:毎日カカオチョコを食べながら7kg減量(30代女性)
「ダイエット中でも完全に我慢すると続かないので、毎日食後にカカオ72%のチョコを2〜3枚だけ楽しむようにした。最初は罪悪感があったけど、逆にその分、他の食事をコントロールしやすくなった」と語る。 - ケース2:週末のチートデイで15kg減(40代男性)
「平日は基本低糖質で徹底管理。でも土曜の夜だけはスイーツもお酒もOKにしていた。1週間頑張るご褒美があると思うと、平日もストレスなく続けられた」と話す。
これらの事例は、「甘いもの=敵」とするのではなく、「自分の心と体に合った範囲で付き合う」ことの大切さを物語っています。


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第4章:甘いものとの上手な付き合い方と実践法
前章では、甘いものを完全に禁止することがダイエットの成功に直結するわけではなく、むしろ適度に取り入れることで継続的な健康習慣が築ける可能性があることをお伝えしました。
ここでは、科学的根拠に基づいた「甘いものとの付き合い方」の具体的な方法をご紹介します。
1. 摂取頻度と量をコントロールする
大切なのは“ゼロか100か”ではなく、“ほどほど”のバランスです。
たとえば、「毎日スイーツを食べる」場合でも、ポーションを見直すことで摂取カロリーをコントロールできます。コンビニスイーツなら半分だけにする、ケーキなら家族とシェアするなど、“食べることをやめない代わりに、量で調整する”という考え方が有効です。
また、週に1~2回「楽しみとしてスイーツを食べる日」を設けるのもおすすめ。これにより、心理的な満足感が得られ、暴食のリスクを下げることができます。
2. タイミングは“活動後”がベスト
糖質が脂肪として体に蓄積されやすいのは、エネルギー消費が少ない時間帯(特に夜間)です。逆に、筋トレや有酸素運動の後は、筋肉がエネルギーを回復しようとするタイミングなので、血糖値が上がりにくく脂肪になりにくいとされています。
米国スポーツ医学会(ACSM)の報告でも、運動後30〜60分以内に糖質+タンパク質を補給することが筋肉の合成や疲労回復に効果的であるとしています。
そのため、「甘いものを食べるなら運動のあと」と覚えておくと、脂肪蓄積を防ぎやすくなります。
3. “質の良い甘さ”を選ぶ
白砂糖をたっぷり使ったお菓子は血糖値の急上昇を招きやすく、インスリンの分泌によって脂肪を溜め込みやすくなります。
そこで注目したいのが、低GI食品や自然な甘味。たとえば以下のような選択肢があります。
- ダークチョコレート(カカオ70%以上):ポリフェノールも豊富で血糖値の上昇が穏やか。
- フルーツ:果糖と食物繊維が含まれており、自然な甘みと満足感が得られる。
- ラカントやアガベシロップなどの低GI甘味料:血糖値の乱高下を防ぎやすい。
また、「手作りスイーツ」も有効です。オートミールや豆腐、甘酒などを使ったレシピなら、栄養バランスも整えやすく、カロリーコントロールもしやすくなります。
4. 食べる前後の“気持ち”を大切にする
食べることに罪悪感を感じると、それがストレスとなり、結果的にドカ食いにつながることもあります。「これを食べたから太るかもしれない…」という考えよりも、「このスイーツを味わって満足したから、他の食事は整えよう」という前向きな視点に切り替えることが大切です。
実際に、マインドフルイーティング(食べることに意識を集中させる食習慣)は、食べ過ぎの防止や体重管理に効果があるという研究もあります(Frayn et al., 2018)。
5. 成功者に学ぶ“リアルなスイーツ活用術”
- 朝食にバナナとヨーグルト+蜂蜜で満足感アップ(20代女性)
「朝に自然な甘さを摂ることで、午後の間食欲が減った」との声も。 - 週1で“本気のスイーツ”を楽しむ(50代男性)
「週末にパティスリーで買ったケーキを1つだけじっくり食べる。これがあるから他の日は我慢できる」という継続法。 - 甘いものをプロテインスイーツに置き換える(30代男性)
「プロテイン入りの蒸しパンやプリンを作るようになって、罪悪感なく楽しめている」との声も。

第5章:結論 ― 甘いものは本当に禁止すべきなのか?
ダイエットというと「甘いものを我慢しなければならない」という思い込みが根強くあります。しかし、ここまで見てきたように、甘いものを完全に断つことは必ずしも健康的な選択とは限りません。
むしろ、過剰な制限はストレスを生み、結果的にリバウンドや過食を招くリスクすらあります。
甘いもの=“悪”という固定観念の再考
砂糖の摂りすぎが体に悪影響を及ぼすのは確かですが、それは“過剰”であって“存在そのもの”が悪ではありません。栄養バランスの一環として、適量・適時に摂取することで、甘いものはむしろ食生活の質を高める要素にもなり得ます。
また、甘いものには脳や心の健康を整える作用もあることが分かっています。疲れたときやストレスが溜まったときに少量のスイーツでほっとひと息つける時間は、メンタルヘルスを保つためにも重要です。
ダイエット成功のカギは“我慢”ではなく“習慣のデザイン”
長期的に健康的な体重を保つためには、「完全に甘いものを禁止する」のではなく、「どう上手に付き合っていくか」を考えることがカギになります。
- 自分のライフスタイルに合った摂取頻度を設定する
- 食べる量・タイミングを意識する
- ストレスと食欲の関係を理解して向き合う
- 高品質な甘味(フルーツ・ダークチョコ・低GIスイーツなど)を選ぶ
- 罪悪感を持たずに、食べる時間を楽しむ
こうした積み重ねが、「継続できる食習慣」となり、結果としてリバウンドを防ぎ、健康的な体型を維持する土台となります。
あなたにとっての“ちょうどいい甘さ”を見つけよう
甘いものを完全に禁止する必要はありません。むしろ、あなた自身の心と体が心地よいと感じるペースで“適切に取り入れる”ことが、長く続くダイエットの秘訣です。
「食べてしまった」ではなく、「今日もちゃんとコントロールできた」と言えるような、自分なりのバランスを見つけていきましょう。
おわりに
ダイエットは食事制限の苦行ではなく、生活そのものを見直すきっかけです。そして、甘いものはあなたの人生に彩りと潤いを与えてくれる存在でもあります。
「甘いもの=敵」と思い込むのではなく、「味方につけるにはどうすればいいか?」という視点で、自分と向き合ってみてください。
きっと、もっと心地よく、もっと前向きなダイエットが見えてくるはずです。
参考文献
- Harvard T.H. Chan School of Public Health. “Sugary Drinks.”
- Epel et al. (2001). “Stress and eating behavior.”
- Tinsley & La Bounty (2015). “Intermittent Fasting and Body Composition.”
- Volkow et al. (2011). “Reward, dopamine and food intake.”
- Frayn et al. (2018). “Mindful eating and weight loss.”
